Toppageへ
 No.440

三輪 薫(みわ かおる)


No.440 『写す』/デジタルフォトの保存性と価値観-2 2008/7/8

2001年に発売された EOS D30 を購入した頃は、CFも DVD-Rもかなり高額だった。しかし、7年経った現在では、当時に比べると信じられないくらい安価になっている。これは嬉しいことだが、1カットあたりの画素数も増え、愛用の EOS 40D や 5D では、DVD-Rでも35ミリフィルムで6〜7本分くらいしか保存できない。年間に1,000本分撮るとして、170枚余り。10年撮ったら1700枚。DVD-Rの寿命が3年とすると500枚になり、これらを新たなDVD-Rに保存し直すには膨大な時間が掛かる。この作業を永遠に繰り返すのは実質不可能に近い。

しかし、デジタルには銀塩とは違ったよさと魅力や可能性があり、同列に比べること自体がナンセンスであると考えている。デジタルと銀塩との使い分けは、EOS D30 を購入以来考えてきて、それぞれのよさを活かした作品創りも行い、個展を開催し続けてきた。だが、僕にとってのデジタル時代の到来は、カメラよりもプリントに対しての期待と嬉しさのほうが大きい気がする。

つまり、長年考えてきた和紙への耐久性の高いプリントが実現できたからである。デジタル画像は、取り敢えずはフィルムをデジタルデータ化すれば得ることができるが、和紙プリントは銀塩ペーパーとは全く別ものである。ただし、デジタル画像でも、最終作品をプリントと考えている僕には、作品点数を限りなく絞り込めば、例えDVD-R の寿命が短くても何とかコピーを繰り返すことで対応できる。

しかし、現実的には撮影後の後処理に膨大な時間を割くことは事実上不可能に近く、撮影画像の大半をDVD-R 2枚に保存するだけで精一杯なのだ。以前聞いた話なのだが、フィルムからデジタルに全面移行したプロの方は、1日撮影するとその作品の整理や保存にまる2日費やすとのこと。僕の目標は、1ヶ月最低10日間の撮影。と言うことは、休みなく働いていて帳尻が合う日数になってしまう。生活や撮影のために稼がなくてもよいならば無理すれば可能なことであるが、画素数が上がれば益々撮影以外の時間が増えることになるだろうから、僕には不可能に近い非現実的なことになる。やはり、長い目で見て考えると、作品創りは銀塩で、お楽しみはデジタル撮影でと言う選択が合っているのかも知れない。

戻る