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 No.443

三輪 薫(みわ かおる)


No.443 『観る』/シネコンの魅力 2008/7/30

僕が生まれ育った山間の人口1万人に満たなかった小さな町にも、小学生の頃には映画館があった。現在のように多様な娯楽がなかったからだろう。大半時代劇の東映映画を上映していて、時代劇が好きだった僕は時々観に行っていたものだ。しかし、現在のように子供の小遣いは多くなく、映画館を経営していた人の息子が友達だったので、もぐりで鑑賞することも多かった。

名古屋の写真学校を卒業して直ぐに弟子入りのために上京したのだが、僕が弟子としていた頃はそれほど忙しくはなく、休みの日には入場料の安い名画座的な映画館によく通っていた。気に入った映画は何度も観た。1回目は映画そのものを楽しみ、次回からは観るテーマを考えて行った。何故なら、観た映画を写真の作品創りに活かしたいと思ったからである。光と影をテーマにしたり、制作する国による空気感や色合いなども参考にして眺めていたものだ。フリーになって自然風景を撮るようになり、随分役立っている。

最近では多くのスクリーンが用意された複合型映画館である「シネコン」(シネマコンプレックスの略。マルチプレックスシアターとも呼ばれている)が全国展開され、大きな都市でなくても映画館がある時代になってきた。映画好きには嬉しいことである。僕が住む相模原市橋本に近い南大沢駅前や橋本駅前にもある。橋本駅前のシネコンは、9つのスクリーンを持っている。大きなシアターは400人程度、小さなものは100人くらいが鑑賞できる。しかも、映写時間を変えてスクリーン数の倍ほどの様々な映画を上映している。イスもかなり上質なもので、音響も申し分ない。都内の映画館では満員状態で、好みの席で観るのは大変な人気映画でさえ、このような郊外型の映画館では、平日には希望に沿ったポジションの席で鑑賞できる利点もある。

また、50歳以上なら、夫婦で観ると二人で2,000円であり、会員になっているといろいろ特典もある。その上、車で行っても、シネコンが契約しているショッピングセンターの駐車場を使えば、駐車料金は無料である。信じられないほど至れり尽くせりの映画館の登場は、嬉しいかぎりである。

映画が好きとは言いながらも、年によっては映画館で1本も観ないこともある。もっぱらTVで放映される映画をデジタルビデオに収録して観ることが大半で、たまにレンタルビデオ店で借りたものを見る程度だった。しかし、上記の映画館の会員になったのを機会に、最低でも毎月一度は通いたいと思っている。やはり、一般家庭に置く大きな画面のTVや音響設備などにいくら投資したとしても、家庭で観る映画と映画館で観る映画の醍醐味には雲泥の差があると思っている。映画は映画館で観るに限る。写真でも、個展で生のプリントを観て感じる印象や感銘と、印刷物で観るものとの違いに似ているだろう。

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