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 No.461

三輪 薫(みわ かおる)


No.461 『写す』/自然の色、写真の色 2008/12/28

隔月刊「風景写真」2009年1/2月号の口絵に久々の掲載依頼があり、しかも掲載誌が届いて表紙にも使われていたので驚いた。今までの編集方針では想像できないことだったからだ。しかし、表紙に掲載されるのは念願であったし、嬉しいことである。

今回のテーマは「自然の色に魅せられて」。PART I のギャラリーテーマは『冬の彩』。イントロの編集部による解説には「・・・。近頃、私たちの目は、あふれる色彩に慣らされて、より鮮烈で濃厚な色を求めているようです。しかし、古来、日本人は自然界の繊細な色の違いを見極め、色に名前をつけてきました。・・・」とあった。このカメラ誌の口絵にも、鮮やかな色合いに満ちた写真が溢れていたという印象が強い。だから、僕の作品など、表紙に登場するなどとは思いもしないことだった。僕がこのカメラ誌のフォトコンテスト部門(月例)の審査や連載を長年続けていたときにも同じ思いだった。たまに口絵に掲載させていただいたときには、多分読者の評価もそれほど高くないと、編集部共々思っていたのが本音だった。だが、ある時の競作の口絵で、読者アンケートの1位と、確か5位か6位に2点入ったことがあり、編集長共々驚いたことがあった。

カメラ誌にかかわらず編集の方の入れ替わりもあり、僕の作品を好きで、評価してくれるスタッフが次々退職するうちに、このカメラ誌への作品掲載はなくなってしまって久しい。しかし、個展開催の告知などは毎回お願いでき、とても感謝している。

自然風景を撮り始めた頃よりも以前から、「日本人には日本人特有の色の感じ方、光の読み方がある」と思い、カメラ誌などでも書き、セミナーなどでも話し続けてきた。しかし、多分、ベルビアの発売を機にだろうが、微妙な色合いの機微を見失ってしまったかのような鮮やかな色彩に溢れた写真が世の中に氾濫し始めたように感じている。鮮やかでハイコントラストな再現をするリバーサルフィルムで、晴れた日にPLフィルターを付けて撮ると目で見た印象とはかけ離れた描写になる。これも表現のひとつかも知れないが、長年このような写真がもてはやされている。カメラ誌や個展などで見る写真には、特に風景写真はこの組み合わせで撮ったものが多く、個展などではダイレクトプリントによってもっと強調されている。10人いれば10人なりの感じる色や引き出したい色があるはずと考えているのだが、今もこの現状に大きな変化は見られない。絵画の世界では考えられないことだろう。

今回の特集を見て深読みすると、ここの編集部も、やっと古来から日本人が抱く固有の色に目を止めてくれた気がする。自然写真への解釈が、一見ドラマチックな出合いが全てではないと思い始めてくれたのではないかと嬉しく思っている。そうでなければ、僕の作品が表紙に掲載され、特集の競作であるトップに掲載されることはないと思うからだ。

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