Toppageへ
 No.465

三輪 薫(みわ かおる)


No.465 『写す』/デジタルプリント 2009/1/24

デジタル時代になって銀塩世界では実現できなかった表現も可能になり、嬉しいことも多い。インクジェットプリンタによるメディア(用紙)の選択もその一つである。

プロセスは、結果を求めるためにあり、プロセスあって結果(作品表現)があるのではないと考えている。メディア(用紙)の選択も作品創りのプロセスの一つだが、デジタル撮影の場合に、撮影結果を見て用紙を選ぶのと、撮影段階から用紙を想像しながら撮るのとでは雲泥の差があると思っている。僕のデジタルプリントは和紙をメインにしており、大半が伊勢和紙だ。銘柄も銀塩ペーパーと違って実に多く、選択の幅が広い分、多様な表現に結びつけることが出来る。

プリント結果はプリンタによる違いも大きい。現在は顔料インクのプリンタが作品創りに適していると思われているようだが、染料インクの耐久性が高くなった今、このタイプも十分活用できる。一昨年開催の伊勢和紙による「花逍遙-II」展では、花に色香を漂わせるため、積極的に染料タイプも使った。和紙は洋紙と違い、耐久性は計り知れないくらい永い。デジタルプリントの耐久性は、和紙の場合にはインクの耐久性と考えてもよいと聞いている。

色合いをデジタルで決めるのは大変難しいことだ。固有の色をもたないネガフィルムの場合と似ているからである。その点、リバーサルフィルムは銘柄別に固有の色をもっている。自然風景を撮り始めた頃から、受けた感銘や印象を引き出すには、どのフィルムが合っているのだろうかと、多種多様な銘柄で撮り分け、長年研究してきた。銀塩フィルムで『カメラで日本画や水墨画を描く』作風を研究してきた結果の集大成が2001年にキヤノンサロンで開催した「風色」展で、25点展示したのだが12銘柄のフィルムがあって我ながら驚いた。画家と同じように自分の色で染め、描くには、数銘柄のフィルムでは不可能である。

この長年の研究がデジタルプリントでとても役立っている。色合いなども含め、デジタルプリントでもオペレーターが出すのではなく、作者が決めなければならない。この色の決定に、様々な撮影条件でのフィルムの発色傾向を知っていると随分役に立つ。

戻る