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 No.466

三輪 薫(みわ かおる)


No.466 『写す』/高画素数のデジタルカメラとメカニカルカメラ 2009/2/1

発売されるカメラの大半がデジタルになり、もはや完璧に家電製品と言えるまでになってしまったような気がする。また、携帯電話機も含め、画素数も増え続けている。常用のレンズ交換式小型デジタルカメラEOS 5D Mark IIの画素数は2,110万で、昨年秋から撮り始めた中判カメラのHasselblad H3D IIは、何と3,900万画素である。銀塩のフィルムに換算すると、いったいどれほどのサイズに相当するのだろうか。3月下旬のPIE(PHOTO IMAGING EXPO 2009)には、 Hasselblad H3D II で撮った作品を伊勢和紙の大豐和紙工業(株)のブースに四八判(1,100mm×2,400mm)で展示する。どのような仕上がりになるか楽しみである。

自動化したカメラだからといって、カメラ任せだけで期待するような結果に結びつくように撮ることが出来るわけではない。多分割測光とはいえ露出補正は必要で、数十万円もするカメラでもAE撮影の露出補正の幅が前後2EVではもの足りず、マニュアル撮影することが多い。特にプラス側には4EVは欲しい。ピントもAF機構を利用しても思うところに完璧に合うわけではない。特に望遠レンズを使って開放絞値近くでピントをシビアに合わせるには、カメラ任せでは目的以外の場所に合ってしまうこともある。このようなときに便利なのがライブビューで、携帯電話機に内蔵のカメラやコンパクトデジカメと同じように撮影前の画像を液晶画面で確認できる。ピントを合わせたい部分を5倍、10倍と拡大すればピント合わせに狂いは生じない。メカニカルカメラのマグニファイヤーでは、中央部分をメインに拡大して見るが、デジタルカメラのライブビューは画面移動によって各部を確認できる。これは大変便利な機構で重宝している。しかし、薄暗いときにはピント合わせに苦労するが、このようなときにこそ電子化されたカメラの威力が発揮できると思うのだが、折角のライブビュー機構でも画面が暗くて分からない。かなり進化したデジタルカメラでも、まだまだの部分もある。

昔ながらのメカニカルカメラの魅力も大きいと思っている。カメラのボディーにはシャッター機構とフィルムの巻き上げ装置、レンズには絞りと距離を合わせるヘリコイドやズーミング用のリングがある。これだけあれば撮影には十分である。どれだけカメラが進化しても、ピントや露出を決めるのを自動化したに過ぎなく、基本的にはメカニカルカメラと同じである。余りにも自動化されたカメラを使い続けていると、長年培ってきた勘が衰えてしまう。進化したデジタルカメラ全盛となった今、もはやこのような勘は必要ないのだろうか。失敗なく確実に撮るにはデジタルカメラ、心の満足感を抱きながら撮るにはメカニカルカメラという選択もあるような気がする。

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