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 No.467

三輪 薫(みわ かおる)


No.467 『写す』/モノクロ写真の魅力と醍醐味 2009/2/7

3月11日から有楽町駅前の東京交通会館7階にある「京セラ・コンタックスサロン東京」で5回目のファインプリント展を開催する。このサロンで4年毎に開催してきたが、3月で閉館になってしまうので、1年半前倒しで開催することにした。

和紙に顔料インクでプリントしたものは、5年前ですら200年は大丈夫ではないかとプリンタのメーカーの方から聞いたことがある。以来、アーカイバルな無酸性紙である和紙プリントもファインプリントとして考えるようになった。2006年に開催した4回目のファインプリント展から、伊勢和紙による作品も展示した。今回も同様にバライタ印画紙のアナログと伊勢和紙のデジタルでのコラボレーションで展開するつもりで準備している。

1994年に1回目のファインプリント展を開催したとき、1日10数時間も暗室に籠もり、延べ40日余り掛かってプリントを創り上げた。徹底的に拘るのが僕の性分だが、この拘りすぎによって体内に薬品が充満してしまった。多分、真夏にエアコンを掛けながら20日連続に近く暗室に籠もった後、インドネシアに火山を撮りに行き、疲れて帰国してからも直ぐに20日余りプリント作業を続け、弱った身体になっていたからかも知れない。以後、暗室作業をする度毎に身体が反応し、常時暗室作業が出来なくなり、医者の助言によってファインプリント展は4年ごとの開催に決めた。

モノクロ撮影でも多用なフィルムを使い分けていて、3回目のファインプリント展は6銘柄あった。この時からネガカラーフィルムと同じ現像システムのタイプを使い始め、意外や僕の作風にフィット感を覚えた。前回はこのタイプのフィルムを使い分けた。今回も同様である。一般的なモノクロフィルムとは一味違ったグラデーション再現があり、ソフトな描写が好きな僕の作風にぴたりとはまってくれる。このフィルムとポートレート用のKODAKのバライタ印画紙エクタルアと組み合わせた作品創りを長年行っている。しかし、常用のKodak BW400CNもブローニータイプが製造中止となり、35ミリタイプしかない。エクタルアはかなり前に製造中止になって、最後の入荷時に400Lの冷凍冷蔵庫を買い求めて保存している。

4回目のファインプリント展から2年半経った現在、久しぶりに暗室に籠もる日々だが、実に楽しい。今回は展示の半数をバライタ印画紙でプリントするが、デジタルプリントと違って制約の多い分、創り甲斐があるような気がしている。長年培ってきた勘とプリントテクニックを合わせる醍醐味があるからだ。きめ細かな部分までもトーン調整できるデジタルプリントのほうが完成度は高くなるが、プリント作品の魅力は銀塩プリントも負けてはいない。前回は1/3ほどデジタルプリントを展示したが、来場者の関心は銀塩プリントのほうが大きかったような気がする。今回の伊勢和紙デジタルプリントは、新銘柄も含めた手すき和紙を多用するので、来場者がどのような反応を示してくれるか楽しみである。

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