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 No.468

三輪 薫(みわ かおる)


No.468 『写す』/モノクロ写真の魅力と醍醐味-2 2009/2/22

僕が和紙プリントに拘る理由がある。40年近く前から日本人としての写真による作品創りをするためには、何が最も相応しいのだろうかと考えていた。おぼろげながらではあるが、和紙にプリントするのがよいのではないかと考えた。その和紙プリントに適用させるため「カメラで日本画や水墨画を描く」作風の構築に努めてきた。

デジタル化が進み、和紙プリントも手軽に出来るようになってきたが、どのような写真も和紙に適しているとは限らない。ファインプリント展では前回から伊勢和紙による作品も展示しているが、モノクロでも銀塩プリントとは一味違う表現が出来る魅力がある。和紙プリントもファインプリントとして認識してからは、被写体などの様々な条件を見て銀塩プリントにするか、和紙プリントにするかを想定しながら撮るのも楽しい。

銀塩のバライタ印画紙の銘柄は少なくなる一方で、作画と表現に合わせたくても選択できないこともある。その点、和紙には様々な原料を組み合わせた多様な銘柄があり、その和紙独特の持ち味を生かした作品創りが出来るのが嬉しい。カラーだけではなく、モノクロも同じである。楮が多い和紙は優しいトーン再現になり、雁皮が多いと艶っぽさが出る。これらの和紙と、多種類のプリンタと組み合わせると実に多様な作品が出来上がる。これらはデジタルによる作品創りの可能性を広げてくれた。元画像もフィルムとデジタルデータでは、同じデジタルプリントに仕上げても、結構違ってくる。この辺りも上手く生かしながら選択すると表現の幅も広くなる。

モノクロには色がなく、その分想像力が湧いてくる。撮る側も観る側も同じである。昔から「写真は引き算」と言われてきた。リバーサルカラーフィルム全盛の頃には、鮮やかタイプがもてはやされていたが、このフィルムは足し算である。僕の作風では引き算を多用した作品が多い。つまり、ハイライトからシャドウまでの幅広いグラデーション再現ではなく、中間トーンをメインとしたプリント作りをすることが多くなっている。3月のファインプリント展も、銀塩もデジタルも同様のコンセプトでプリント制作している。

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