Toppageへ
 No.476

三輪 薫(みわ かおる)


No.476 『生きる』/グラン・トリノ  2009/5/26

GWは例年遠くには出掛けないことにしていて、久しぶりに映画を観に行ってきた。橋本駅前にあるシネコンの定員100人ほどのスクリーンだったが、この日は格安の1,000円だったためか、平日ながら今までにない多くの鑑賞者がいた。僕らは会員で、50歳以上なのでいつでも1,000円で観ることが出来る。観たのはクリント・イーストウッドが監督・主演の「グラン・トリノ」。以下、シネコンサイトの紹介記事。

[あらすじ] 妻に先立たれ、息子たちとも疎遠な元軍人のウォルト(クリント・イーストウッド)は、自動車工の仕事を引退して以来単調な生活を送っていた。そんなある日、愛車グラン・トリノが盗まれそうになったことをきっかけに、アジア系移民の少年タオ(ビー・ヴァン)と知り合う。やがて二人の間に芽生えた友情は、それぞれの人生を大きく変えていく。

[解説] 『ミリオンダラー・ベイビー』以来、4年ぶりにクリント・イーストウッドが監督・主演を務めた人間ドラマ。朝鮮戦争従軍経験を持つ気難しい主人公が、近所に引っ越してきたアジア系移民一家との交流を通して、自身の偏見に直面し葛藤(かっとう)する姿を描く。イーストウッド演じる主人公と友情を育む少年タオにふんしたビー・ヴァン、彼の姉役のアニー・ハーなどほとんど無名の役者を起用。アメリカに暮らす少数民族を温かなまなざしで見つめた物語が胸を打つ。

この映画で胸を打つのが、肉親である子供や孫達との交流ではなく、隣りに住む、一見アメリカ人が偏見を持ち、嫌うのではないかと思うアジア系移民の孫のような歳の少年達との触れあいである。クリント・イーストウッドが主人公を演じるウォルト・コワルスキーは朝鮮戦争の帰還兵で、フォード社を勤め上げ、彼が手がけたフォードの1972年製グラン・トリノを大切に乗り続けている。僕はアメ車を乗ったことがないが、カッコイイと思う車が結構ある。そのグラン・トリノも実に素敵な車である。この少年の従兄弟がリーダーのギャングに脅されて盗もうとする場面から両者の交流が始まる。少年はギャングに嫌がらせを受け続け、挙げ句姉を犯され、少年の自宅は機関銃で撃ち込まれてしまう。主人公ウォルトは、このギャング達から少年達を開放させるため、拳銃を持たずに単身乗り込み、撃たれて死亡してしまう。結果、ギャングは逮捕され、隣の一家は救われる。

遺言により家は教会に寄付し、大切なグラン・トリノは少年にプレゼントされる。近い肉親よりも友人となった少年達への想いを強くもって死んでいった。妻が亡くなった後も子供や孫にも慕われないまま独り暮らしの人生は一見悲しく寂しいが、最後には隣人との心温まる交流を得て幸せで、充実した時間だったのだと思う。自分のことしか考えていないと思われるウォルトの子供や孫よりも隣人の少年達に心を寄せながら暮らし、一生頑固さを貫いた人生は共感を覚えるものがあった。

それにしても、クリント・イーストウッドは素敵な歳の重ね方をしている。ショーン・コネリーも同様だが、歳を重ねるに従って魅力が増してくる。昨年還暦を迎えた自分の姿や行動に重ね合わせ、このように生きたいものだと痛感させられた映画でもあった。

戻る