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 No.492

三輪 薫(みわ かおる)


No.492 『写す』/バライタ銀塩タイプのデジタルペーパー 2009/11/1

デジタル化が進み、プリンタも進化し、デジタルプリントテクニックも身につき、一見銀塩の印画紙にプリントしたと勘違いするプリントも多く見られるようになってきた。隔月刊「風景写真」の2010年月例コンテストのプリント部門の選者を久しぶりに担当していて、先月に1回目の選考を終えたのだが、読者のプリントレベルの高さに驚いた。しかし、同じカットを写真用紙にプリントしたものと銀塩の印画紙にプリントしたものを比べると、やっぱり銀塩のほうが勝っていると感じてしまう。

それはメディアである写真用紙にも原因があるのだろう。今までの写真用紙では仕上がりが素晴らしくても何かぬめっとした感じが残り、多少の違和感を覚えることも多かった。しかし、最近の写真用紙にはベースの原紙に銀塩印画紙と同じようなものを使ったタイプが結構発売されるようになってきた。ベースの紙に硫酸バリウムを塗り、その上にインク受理層(受容層)を施したタイプである。プリントした後の画質も結構銀塩印画紙に近く感じる。バライタ層によってインクの受け止め方がよくなったためだろうか。

また、和紙を原紙にした写真用紙も出てきた。原紙が和紙だからか画質はバライタ印画紙の光沢タイプを自然乾燥したように見える、一見「半光沢」や「マット」調である。これらも今までのマット紙や画材紙とはひと味違う結果が期待できる。写真用紙のベースになる紙質によっても結果が随分変わるものである。

先月、神保町駅近くのギャラリーでHPC(日本ハッセルフォトクラブ)の写真展が開催され、見てきたが、今回は会場の関係とかで、全てのプリントが今までとは違って銀塩ペーパーではなく、インクジェットプリンタによるデジタルプリントだった。確かに銀塩のダイレクトプリントのようにハイコントラストなグラデーションではなく、なめらかなトーン再現をしていた。しかし、抜けもよくなく、ツァイスレンズで撮った作品にしては何か物足りないプリントだった。制作側にもっとレンズの再現性への理解力があったら、このようなプリントで展示することはなかったと思っている。同じデジタルプリントとは言え、監修次第でもう少しましな仕上がりを期待できたと思う。これもデジタル時代を迎えたマイナス点が出た写真展だったと残念に感じて眺めていた。

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