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 No.500

三輪 薫(みわ かおる)


No.500 『写す』/冬の日差し 2010/1/15

光と影がはっきりしたライティングよりもソフトで優しい光が好きである。だからか、晴れた日の撮影でふと気がつくと日陰にいたりすることも結構ある。沖縄は夏が一番と思っている人が多いと思うが、冬の沖縄もいいものである。沖縄の島々には随分通っているが大半夏で、冬の沖縄には本島の彼岸桜(寒緋桜)を観たいと出掛け、沖縄の冬のやわらかな日差しに出合い、冬の沖縄の魅力を満喫してきた。冬の沖縄の海の色は夏とは違い、見た目に優しい色合いである。何事も強烈なものがいいわけではなく、海の色も淡く染まった表情を観るのもいい。

従来の日本の建築は深い軒や障子があり、ダイレクトに日差しが部屋に入り込むことは少なく、柔らかな光に包まれていた。この光りを楽しんでいたはずが、いつの間にか建築様式が西洋化し、部屋にダイレクトな日差しが入るようになって、光りに対する考え方や感受性も変化してきたように思っている。だからか、写真の世界にもいつの間にか強烈なライティングや色合いが好まれるようになってきたのかも知れないとも思っている。本来の日本人のDNAにある美意識までもいつの間にか変わってしまうかも知れないが、いつまでも日本人特有の美意識や感受性を持ち続けたいと思っている。

2月7日まで伊勢和紙ギャラリーで「ファインプリント展-V」を開催しているが、このギャラリーのある伊勢和紙の大豐和紙工業(株)の社屋は純日本建築である。二階にあるメインギャラリーは天井高3,5m余りの和洋折衷の造りだが、一階には広い和室がある。この和室が控え室になっていて、伊勢和紙ギャラリーでの個展開催中にはこの和室で寛ぐのを何より楽しみにしている。軒先深い広縁は二方向にあり、その前は結構広い日本庭園になっている。暖かな日差しの日にはこの縁側に腰掛けて庭を眺めて過ごすひとときは実に心地よく、至福の時と思っている。

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