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 No.520

三輪 薫(みわ かおる)


No.520 『創る』/写真のトーンとグラデーション再現 2010/8/1

巷では、三輪の写真はハイキーであると思い込んでいる人も多いようだ。確かに、たまには見た目よりも明るいトーンの作品を発表することもある。しかし、ハイキーではない。色濃い被写体よりも明るめの被写体を多く撮っているだけである。また、影が強く出る晴れの撮影が少なく、画面全体に光りがよく廻っている作品が多いので、勘違いされることもあるだろう。作品発表のメインの個展では、明るめのものからかなり色濃いトーンの作品も展示している。勘違いしている人はカメラ誌なども含め、断片しか見ていないということだ。断片で判断し、他言するとは情けないことだと思う。

明日から始まる小津ギャラリーでの個展「樹風」では、どちらかといえば色濃い作品が展示の多くを占めている。朝夕の薄暗い時間帯で撮ったものが多いということもあるが、カットによっては見た目よりも濃いグラデーションで仕上げているものも結構ある。逆に、少し明るめのトーンにしたものもある。何故かと言えば、複写的に撮ったのではなく、心で感じた世界を写し取った作品だからである。作者が受けた印象を個展で第三者に伝えるには、当たり前の再現ではただの写真を越えた表現が出来るはずがなく、多少は変えざるを得ないと思っている。いや、自己表現であるならば多少は変わってくるだろう。

フィルムで撮った作品で、フジクロームベルビアやエクタクロームE100VSで見た目の自然さを出そうと期待しても無理なことが多い。ましてや光りや被写体がハイコントラストなものにPLフィルターを併用したら、自然に見えることが珍しいとまで言えるだろう。デジタル時代になり、色合いやグラデーション、コントラストなどもいとも簡単に変えることが出来るようになってきた。これはこれで素晴らしいことで、活用しない手はない。しかし、ついついエスカレートしてしまいがちになることもあるので注意が必要である。

その点、リバーサルフィルムで撮った作品をデータ化してプリントしても、元画像がしっかり記録されていて、デジタルのようにモニターが変わると色合いなども違って見えるのとは大違いで、基準点がはっきりしている分、迷いは少なく、エスカレートすることもない。これもフィルム撮影の利点である。

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