Toppageへ
 No.521

三輪 薫(みわ かおる)


No.521 『創る』/フィルムの底力 2010/8/10

今回の小津ギャラリーで展示していたカラー作品の元画像は全てリバーサルフィルムである。デジタルプリントを展示した個展は今回で8回目であるが、キヤノンサロンの「風色-II」展とキヤノンギャラリーで開催した「花逍遙-II」展以外の元画像は全てフィルムである。モノクロのファインプリントによる個展も同様だ。

しかし、近年の撮影では、シャッターを押す回数の大半はデジタルカメラである。フィルムでの撮影も並行に行っていて、デジタルだけ撮って満足している訳ではない。これはと思ったカットは必ずフィルムでも撮っている。アナログ全盛の時代は多い日には30本も撮ることがあったが、現在ではせいぜい数本撮ればいいほうである。しかし、迷いながら撮ることはないので手応えのある作品が出来る確率は高く、実に効率がいい。

現在のデジタルカメラの進化は著しく、デジタル画像やデジタルプリントだけを見ていると銀塩と見間違うくらいの再現性に感じることもある。時には越えているのではないかと思うこともあるくらいだ。しかし、このように感じていても個展の元画像をフィルムに拘る理由がある。ツァイスレンズを使い始めた頃、このレンズは空気までも写るのではないかと感じ、期待しながら撮影していた。フィルムをスキャンしたデジタル画像をプリントした画面からはこの感覚が甦る。見た目の自然な奥行きが再現され、その場の臨場感を表してくれる。これはレンズとフィルムが空気を写しているからだと思っている。この点では、デジタル画像はまだまだ及ばないのではないかと感じている。アナログの職人芸を機械が越えられないのと似ている気がする。

今回の個展作品は全てツァイスレンズのハッセルブラッドで撮った作品である。だからこそ期待する空気感や臨場感も素直に出せ、それでも足らないと思う和紙プリントでは、落水仕様の重ね漉き和紙で期待通りのプリントが出来上がった。これら全てがフィルムの潜在的な底力(再現力)が支えてくれていると思っている。

戻る