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 No.523

三輪 薫(みわ かおる)


No.523 『生きる』/忘れてはいけない史実と忘れたい事実-2 2010/8/25

何時の日か、写真には銀塩写真というものがあったらしいと言われる時代が来るような気がする。世の中に銀塩写真が生まれて200年足らずで、デジタル写真が一般的になってからはまだ10年くらいである。その今でも既にデジタル全盛と言われ、銀塩写真をメインとする人達は実に少数派になっている。

たったこれだけの歴史しかない写真でも、あっという間に変わってしまう。考えようによっては実に恐ろしいことでもある。銀塩写真は世界史に残る文化遺産であると思っている。しかし、写真メーカーによっては銀塩写真をもう忘れたい、否定したいと思っている会社もあるだろうし、逆に忘れてはいけないと必死で守って行こうとしている会社もあるだろう。

銀塩のフィルムも写真文化遺産の一つで、残すべきフィルムもあると思う。このような末代までも伝えたい文化遺産は、多少の犠牲を払っても残すべきだと考えている。写真の世界を塗り替え、新たな境地や表現を切り開いてきたコダックのコダクロームは既に現像が打ち切られ、エクタクローム64プロも一昨年製造が打ち切られ、そろそろこの世から消えようとしている。誠に残念である。思うに、デジタル写真が万能と考え、銀塩写真をこの世から消し去ったとき、きっと後悔するに違いないと予測している。

現在シャッターを押す大半がデジタルでも、終生銀塩写真と関わり、フィルム撮影やバライタ印画紙でのファインプリントの制作を続けたいと思っている。身勝手な考えだが、生きている間は銀塩写真がなくならないことを祈るのみである。

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