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 No.526

三輪 薫(みわ かおる)


No.526 『創る』/カメラで和紙に描く世界 2010/9/25

『カメラで日本画や水墨画を描く』という発想をしたのは40年近く前だが、フリーになった30年前頃にこの発想を本格的に自分の作風として研究を始めた。生まれ育った実家の家業が塗師と言うこともあるだろうが、日本人の僕が写真で作品創りをするなら、日本的な作風の構築を目指しても不思議ではない。この作風の構築のためには色の研究が第一と考え、数多くのリバーサルフィルムの発色傾向を研究し始めた。

フリーになった頃、富士写真フイルム(株)からフジクローム・ベルビアが発売され、瞬く間に愛用者が増え、特に自然風景を撮る者の常用フィルムになった。それまでのフィルムに比べ超鮮やかでハイコントラストな色調再現が特長である。だからか、巷に溢れる自然風景の写真は、絵の具を厚く塗り込めた油絵のようなタッチの写真が溢れるようになってきた。試供品のベルビアを頂いて試写したが、僕には余りフィット感を覚えなく、渋く深い色調再現を見せてくれるコダクローム(PKR/PKM)やエクタクローム64プロ(EPR)を多用していた。生活費や作品作りの費用を稼ぐために始めたコマーシャルフォトではEPRをメインに使っていた。自然な発色をするからである。20数年前の一時期、美術館の仕事をしていたことがあり、ヘンリー・ムーアの野外彫刻の写真集のための撮影もした。この時最も目の当たりに見て感じたトーンに撮ることができたのがエクタクローム64プロ(EPR)とツァイスレンズの組み合わせだった。

だからといってベルビアを毛嫌いしているのではなく、結構使っている。しかし、晴れた日に使うことはまず少なく、ベルビアの派手さやコントラストが表にはっきり出ない条件で使っている。このフィルムはそのような時にこそ威力を発揮してくれると考えている。

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