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 No.527

三輪 薫(みわ かおる)


No.527 『創る』/カメラで和紙に描く世界-2 2010/10/5

自然風景を撮り始め、のめり込むほどに『カメラで日本画や水墨画を描く』作風は僕に合っていると確信した。僕の最終作品は長年プリントと考えていて、写真の世界に入ってからずっと変わっていない。この作風を最も生かしてくれるのが和紙だと思ったのだが、フリーになった当時はファインプリントとして通用する耐久性の高い和紙の印画紙は現れず、乳剤を塗布するモノクロペーパーはとてもファインプリントとは言えないレベルだった。

しかし、時代の進化は必ず訪れるもので、2000年頃にはインクジェットプリンタによって和紙プリントが可能になってきた。何時の日かこのような時代が来ると信じ、多種多様なリバーサルフィルムの研究を続け、『カメラで日本画や水墨画を描く』作風の構築に励んできた甲斐があり、2003年に開催した和紙による初めての個展「風香」で開花した。しかも、エプソンのピエゾグラフという絵画の複製技術を駆使した高度な出力で、自分が目指してきた作風の構築に間違いがなかったと再確認できた。

以後、大半伊勢和紙によるデジタルプリント作品を展示する個展を開催し続け、先の小津ギャラリー展の「樹風」で8回目となった。今や全国的に愛用者が増えている伊勢和紙photoの開発段階から関わってきた製品精度の高い伊勢和紙を作っている現社長夫婦に30年前頃に出会ったのも幸いだったと思い、感謝している。前述の「風香」展も中北さんの尽力もあって実現できた。

近年では、手漉き伊勢和紙をメインに作品作りをしているが、不満を感じたことはない。新たな要望や、かなりの無理難題を伝えても必ず応えてくれる嬉しい味方となっている。僕の作品作りには、伊勢和紙は欠かせない。

今月20日に発売の隔月刊『風景写真』11/12月号でインクジェットプリンタ用の用紙特集があり、4ページ担当している。勿論、伊勢和紙については僕が書いている。8月の小津ギャラリー展で展示していた未晒しの手漉き伊勢和紙による作品も1点掲載される。デジタル時代になった今、銀塩写真とは別もののデジタルプリントを生かした作品作りには銀塩の印画紙とは一味も二味も違う画材紙や和紙などを活用してこそ新たな作風も開発でき、今までとは違った作品作りにも結びつく。この辺りも解説しているので、是非購読していただきたい。

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