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 No.528

三輪 薫(みわ かおる)


No.528 『創る』/合同審査と受賞作品 2010/10/15

カメラ誌の隔月刊『風景写真』で、今年から新たな「マスターズ・フォトコンテスト」が行われた。参加資格は、過去の『風景写真』フォトコンテストで年間最優秀作品賞、年間最優秀作家賞、年間グランプリのいずれかの受賞歴があること。2009年度フォトコンテストで総合獲得ポイントが上位30名以内に入っていること。これらのどちらかの条件を満たしていることである。今回の応募資格があるのは約70名。賞としては、僕を含め3人の審査員によって選ばれる「マスターズ本賞(1人)」と、読者によって選ばれる「マスターズ読者賞(1人)」がある。

このようなコンテストでの合同審査も何回も経験しているが、たいていは審査員の大御所(年配者)の見解によって決まることが多い気がする。若輩者の見解など、時によっては無視されることもある。だったら最初から合同審査ではなく、名前を公表しての大御所1人で行うほうがいいのではと主催者側に申し出たこともある。その点、今回の審査は審査員が3人とはいえ、審査は個別に行い、その総合点によって受賞者が決まった。これはすっきりとしていて気持ちがいい。

作品の評価には絶対というものがないと思っている。選ぶ側の人選によって随分評価が変わることもある。だからコンテストを目指す者にとって「選者研究」にとらわれることもあるようだ。すでに担当する審査は終わったが、この『風景写真』のプリントの部を担当することになって前回までよりも画材紙や和紙プリントの作品応募が随分増えたと、初回の審査時に編集長に言われた。僕が和紙プリントによる作品創りや個展を多く開催していることを読者が知っていて、デジタルプリントの写真用紙以外の作品でも正当な評価を得られるのではないかと期待したからではないだろうか。

写真とは言え、選者によって評価が変わることがあるのは、作品作りの姿勢や考え方、作風や美学なども違うのであるから当然である。今回の審査結果は何と僕が1位と判断した作品が総合点でも1位を確保して、見事「マスターズ本賞」を受賞した。僕の審査基準は、出合いよりも作者が如何に作品創りをしたか、その作品が見る側(今回は僕)にどれだけ共感を覚えさせ、心を響かせたかを重視している。自然風景に限らず、いい被写体に遭遇することも大切な要素ではあるが、それなりのレベルの人ならこれくらいの写真は撮ってしまうだろうと思う作品にはダントツ高い評価をするような共感は覚えない。それよりも、その人ならではの美学などで創ったと思われる作品に共感を覚えてしまう。写真はカメラで撮るものではなく、「カメラで描く」という姿勢を長年貫いてきた僕には、どうしても同じ考え方で描いたと思う作品に惹かれてしまう。今回の結果で面白く感じたのは、最終的に1位にしようか、2位にしようかと迷いながら2位に選んだ作品が、他の2人では10位以内に選ばれていなかったことである。

ちなみに、「マスターズ読者賞」に選ばれた作品は、僕は10位以内には選んでいない。情景としては素晴らしくても、総合1位に相当する表現力を持った作品とは感じなかったからである。しかし、僕ら3人の選者はプリントを見て判断している。「マスターズ読者賞」は誌面に掲載ので選んでいるので、やはり生のプリントを見て感じ、評価するのとは違っても当然のことだろう。

2010年5-6月号誌上で候補作品が掲載され、9-10月号誌上で受賞作品が掲載されている。11月上旬には新宿のアイデムフォトギャラリーシリウスで写真展も開催される。興味のある方は共に是非ご覧ください。

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