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 No.536

三輪 薫(みわ かおる)


No.536 『創る』/アナログとデジタルプリントの比較と使い分け-2 2010/12/31

今年は個展を開催するつもりはなかったが、昨年に引き続き日本橋の小津ギャラリーで伊勢和紙による写真展を開催した。8月上旬の超暑かった日々にもかかわらず、実に多くの来場を得た。嬉しいことである。今回も昨年同様に会場の半分を主宰しているフォトワークショップ「風」のメンバー展にしたこともあり、自分の作品の準備はいつもの個展よりも軽くなった。だから開催できたとも言えるが、今回も多種の手漉き伊勢和紙にプリントし、和紙の表現力を再確認するよい機会でもあった。やはり、積極的に行動すればなにがしか得るものがある。来年もこのギャラリーでの3回目の写真展が内定していて、同様にフォトワークショップ「風」展と一緒に行う予定である。

監修する写真展も毎年多く手がけているが、改めて感じるのがフィルム撮影の銀塩プリントから受ける印象である。やはりというか、滑らかで美しいグラデーション再現のプリントでも、トーンの起伏が違って感じるから不思議だ。また、トーンの深い画面の作品から受ける印象はとても力強い。勿論、印画紙に似た写真用紙にプリントしたデジタルよりもいい感じに仕上がることが多い気がする。

しかし、デジタル写真には良いところも多くある。カメラだけではなく、プリント用紙の選択が増え、和紙や画材紙なども選ぶことができる。今までの銀塩ペーパーだけで作っていた作品よりも、作画と表現の幅が広がってきたのは確かで、嬉しいことである。僕の顔を知らない人でも、写真展会場などでサインすると「和紙プリントの三輪さんですね」と言われることもある。

昨年3月で閉館になってしまった京セラ・コンタックスサロン東京での最後の個展を開催した後、暫く休んでいた 8×10inch カメラによる撮影やファインプリント制作を再開したいと思いながら果たせず、1年半以上も過ぎてしまった。来年こそはと思っている。今後は益々デジタル化が進むと思い、覚悟もしているが、いつまでも銀塩写真がこの世に存続してくれることを願ってやまない。来年も今年以上に有意義な過ごし方が出来るようにしたい。

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