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 No.540

三輪 薫(みわ かおる)


No.540 『創る』/デジタル撮影と画像処理 2011/2/1

フィルム撮影では、撮影に失敗すると全てを諦めることになり、撮影時の緊張感を生む。デジタル撮影では多少の失敗は後処理で救われ、このことが撮影にイージーさを生んでしまうことにもつながってくる。しかし、実際に助かることもあるので全て否定は出来ない。

フィルム撮影で拘っていることにフィルムの発色がある。銘柄によってそのフィルム特有の色合いやコントラスト再現が違い、目の前の情景を映像にするにはどのフィルムが適切なのかと考えて選んでいる。また、個展会場に並べた作品を思い浮かべ、その結果を逆算してフィルムを選んで撮っていて、画家のように自分の色を持ちたいと思いながら様々なフィルムの研究を長年続け、撮り比べてきた。しかし、デジタルカメラは1台のボディーで、銘柄の違うフィルムを入れた数台以上のカメラの代用となってくれる。色温度やピクチャースタイル、露出補正などを駆使して撮ると自分の求める色調やグラデーションが生まれる。撮影感度を変えて撮ると、フィルムカメラでは撮ることができなかった世界も引き出せる。作画と表現における理想的な絞り値とシャッター速度を選択できるからである。

写真展の監修をしていて気づくことがある。見本プリントの色調やコントラストなどを撮影の元画像と見比べるとビックリの差があるものが少なくない。「写真はカメラで描く」という姿勢で作品作りをしている身にとっては驚くことではないが、撮影時にその画像を思い描いているのだろうかと思ってしまう。多分に撮影後の後処理で色合いやグラデーション、コントラストなどを随分変え、時にはシャープネスなどもかなり強くしているだろうと想像する。僕は後処理で撮影画像をそれほどには変えない主義で、撮影時に実に多くのバリエーションで撮っている。色温度、ピクチャースタイル、RAW 画像の画素数、撮影感度、フレーミングといろいろ変えながら撮り続けている。だから、シャッターを押す回数は凄く多いのだが、被写体のカット数はそれほどでもない。

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