Toppageへ
 No.552

三輪 薫(みわ かおる)


No.552 『創る』/BS Japan「写真家たちの日本紀行」-2  2011/5/28

今夜、4月中旬にロケを行った「キヤノン プレミアム アーカイブス 写真家たちの日本紀行」2回目の奥大井編が放送された。1回目を含め、俳優やタレントではない僕が自分の姿をTV画面の中で眺めるのはちょっと気恥ずかしく、自分の話し声を聞くのも不思議な気がする。僕は結構早口で、ロケの時にはディレクター氏に早口になったらシグナルを入れて下さいとお願いした。気をつけながら話していたのだが、夢中になるとつい早口になってしまうようだ。

しかし、心配していた発言内容は、各8時間分のビデオ撮影にもかかわらず、要点を上手く伝えられるようにまとめてあったと思う。撮影した5%くらいに短縮する編集は大変な作業だ。編集途中には担当ディレクターやアシスタントディレクターから度々連絡があり、きめ細かな確認を続けてくれた。映画でも同じだが、編集通りには撮影していなく、ロケ手順などによっては撮影順がかなり前後する。撮影地でビデオ撮影の放映画像の後には、このシーンで撮った僕の作品が出る。放映の候補作品として提出した40点余りのカットと照らし合わせ、選ぶのも大変だろう。

1回目の放送が終わった後、TVを見た方からビデオ撮影の画像と僕の作品の色合いのギャップが不思議と連絡があった。僕の個展作品は優しい色合いが多く、TVの液晶画面では結構鮮やかで、カットによってはコントラストも高く感じたかも知れない。今回の番組は、主演者(作者)の作品発表の場というよりも、登場の写真家が、どのような場所と撮影条件で、どのようにして撮っているか、結果どのような作品が出来上がったのかをレポートし、作者の作品創りへの思いや考え方を語る番組と解釈している。だから、今回は個展で展示する伊勢和紙プリントとは違った仕上げをした。個展会場で見るプリントは用紙によっても見る側の印象が違い、銘柄の選択により仕上げ方も違ってくる。また、TVは透過光で眺め、反射光でみるプリントとも当然違ってきて、原画が同じでも同様に見えることはないと思う。放映を楽しんで頂くことも考慮した仕上げでもあり、僕の個展作品の仕上げ方とは多少違って見えるのは当然だと思っている。

今回の取材では『視聴者に楽しんで見て頂くには、どうすればいいか』という考えと姿勢で臨んでいた。撮影、行動、発言、作品の全てだ。これは難しい。特に1回目の富士山麓編は、僕が見てもビデオ撮影の画像はかなり地味に感じている。視聴者のみなさんに楽しんで頂くには、ビデオ撮影の画像を実際よりも地味目に仕上げる必要はなく、この件は放送後に連絡してきたディレクター氏に伝えた。2回目の奥大井編ではこのことも注意し、考慮しながら編集してくれたようで、ビデオ撮影の画像と僕の作品とのギャップは余り感じなかったのではないだろうか。

今回のたった4日間でのロケで、各2日間で視聴者が納得する?作品を20カット(WEB で30カット)作り、どのように見せるかを考えながら撮り続けていた。三輪薫風の作品と言えるかどうかは別として、最低レベルでも自分が後悔しない、写真ではなく、作品を創り、見せなければならないきつい仕事だった。その辺りの計算なしには、各編共にたった2日間ではどだい無理で、パシャパシャと撮って、「できましたぁー」とは、僕には言えない。

作品内容の評価は別として、各40カット近くをディレクターに渡したのだから、あの決して恵まれたとは思えない撮影条件の中で、何とか撮れたのではないかと思っている。普段から何にでも興味や関心を持ち、たわいなく見える情景でも作品にすると言う姿勢で臨んでいる。この姿勢があってこそ、何とかなったのではないかと思っている。

戻る