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 No.553

三輪 薫(みわ かおる)


No.553 『創る』/BS Japan「写真家たちの日本紀行」ロケ裏話 2011/5/29

それにしても今回の取材、奥大井編では体力テストを受けている気分だった。麓派を自認する僕には、登山家にとってはジョギング程度のアカヤシオの撮影での小山登りでもきつく、奥大井湖上駅から駅を見下ろす高台までの心臓破りの数百段の鉄はしごの階段は特にきつかった。場面の至る所で息切れがしっかり聞こえてくる。放映後には直ぐ、見た方からねぎらいのメールが届いた。

また、WEB に掲載のロケスタッフのコメントや写真にも驚いた。1回目はザックを置き忘れた失敗談で、最初の撮影後、次の被写体を求めて三脚を担いで歩く僕の後ろから、ロケ車の運転手さんがカメラザックを担いで付いてくる姿がばっちり写されていた。2回目は、愛用のカナダで買った帽子を被っていたところ、日差しの影になり、脱いでくれと頼まれた。渋々脱いだまではよかったのだが、ぺちゃんこになった頭髪を妻が差し出してくれた手鏡を見ながら直している姿をしっかり撮影され、写真と共に報告されてしまった。

番組内では、1回目の富士山麓編でアオリ機構内蔵の TS-E17mm と TS-E24mm を使って夢中になって白糸の滝を撮っていた時、魚眼レンズのように前玉が飛び出した TS-E17mm に降っていた雨が付き、自分で傘を差していて撮るには難しく、つい「おーい、おーい」と妻を呼んでしまった。このシーンも AD (アシスタントデレクター)にちゃっかり小型ビデオカメラで真横から撮られ、しっかり放映されてしまった。AD が傍にいたなんて全く気づかなかった。この呼び方は女性陣には余り評判がよくないようで、身内の女性からは「それ見ろ、名前で呼ばなかったぞ」って夫がニヤニヤしていた、とのメールが妻に来た。それにしても現在の手のひらに収まるような小型ビデオカメラの性能には驚くばかりである。余程注意していないと自覚しないままに撮影され、放映されてしまう。参ったなぁーの心境だが、放送や WEB を見る人からすると面白く楽しい内容で、まあ仕方がないかと思ってしまう。しかし、僕の性格を読み切ったすっぱ抜きには違いない。

2回目の奥大井編では、提出した花の作品を撮っているシーンがいくら捜してもなく、「何処で、何時撮ったのですか」との問い合わせもあった。1カットは、朝食後の撮影で、スタッフのみなさんは暗がりからの早朝撮影後の疲れでお休み中。もう1カットは、アカヤシオの撮影で山登り後にゆっくり取っていた昼食中。みなさんは食が旺盛で、さっさと食べ終わった僕は目の前にあった花を撮った次第。カメラマン氏や他のスタッフもビデオ撮影よりもお腹を満たすことに夢中だったようだ。

今回のADは大学卒後数年の高校時代から剣道でならしていたという体育会系の女の子で、いつも重い機材を担ぎ、ビデオテープを一杯詰め込んだザックを担ぎながら走り回っていた。華奢な女の子には到底勤まらない大変な仕事である。この子は実によく働き、動いていたが、よく転んでもいた。転びやすいと思われる体型にも原因がありそうだが、どうしてここで転ぶの?と聞きたいくらいよくコロコロと転んでいた。富士山麓編では、通路が凍った鳴沢氷穴での転びの様子が WEB に報告されている。この文章は多分ディレクター氏が書いたのだろうが、奥大井編では逆に、ディレクター氏が吊り橋を渡るのに足がすくんでワイヤーにしがみついている姿をADがしっかり撮り、富士山麓編に掲載の報復をしている。このように実に面白く、楽しいスタッフの方々であった。放送を見た多くの人から、構えなく何時も通りの三輪さんだったと言われた。慣れないビデオカメラにも緊張しないで向かえたのは、気持ちをさりげなくほぐしてくれるスタッフの方々の暖かな気持ちのお陰だと感謝している。

「キヤノン プレミアム アーカイブス 写真家たちの日本紀行」WEB
 http://www.bs-j.co.jp/shashinka/

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