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 No.562

三輪 薫(みわ かおる)


No.562 『創る』/フィルムとデジタル画像の違い 2011/8/20

29日(月)から日本橋の小津ギャラリーで2009年から毎年夏に開催している3回目の写真展が始まる。今回も全て伊勢和紙でのプリントで、僕の個展と主宰しているフォトワークショップ「風」の合同展である。今回の個展作品は5月に放映されたBS Japan「キヤノン プレミアム アーカイブス 写真家たちの日本紀行」の富士山麓編と奥大井編の中で、水をテーマにセレクトした「水の抄」と題したものだ。用紙のサイズは半切から四八判(1,100mm×2,400mm)まであり、実画面寸法は最大で800mm×1800mmである。

僕の個展では大型プリントも多く、銀塩ペーパーによる「風光-III / IV」「樹奏」「Roc」では、短辺1,000mmの作品6点と全倍10点で展示していた。35ミリ判の1,000mm×1,500mmの銀塩プリントでは、間近で眺めるとフィルムの粒子がはっきりと見えるが、画面全体が楽に視野に入る距離から眺めると結構シャープに感じる。来場者のプロの中には中判カメラだと勘違いした人もいたくらいだ。

2003年に開催の初めての和紙プリントによる「風香」展では、全てCONTAX 645で撮影のフィルムをドラムスキャナでデータ化して1,000mm×1,350mmの画面サイズで5点展示した。間近で眺めても、まるで8×10inch判フィルムで撮って銀塩ペーパーにプリントしたようなきめ細かさに感じた。フィルムをデータ化するとその情報量の豊かさには驚かされる。また、2008年に京セラ・コンタックスサロンで開催の「風光-V」展では、CONTAX 645で撮影の3点を四八判の手漉き伊勢和紙に実画面の横幅1,800mmのパノラマサイズでプリントして展示した。「風香」展のプリントは全てセイコーエプソンの指定ラボで出力していただいたが、以後の大型プリントは伊勢和紙の製造元の大豐和紙工業(株)社長の中北喜得さんにお願いしている。まず初めにこちらから大まかな見本プリントを送り、画面全体の縮小版と原寸の部分伸ばしのテストプリントを何度も繰り返し、その都度宅急便で送ってもらい、双方が納得するまでプリントを繰り返している。最後は伊勢に出向いて立ち会いながら出力の確認をする。今回も同じだ。

今回、四八判の手漉き伊勢和紙プリントに選んだ作品は白糸の滝で、EOS 5D Mark IIでアオリ機構内蔵のTS-E17mmで撮った横位置パノラマ画像である。デジタル撮影では今回初めて四八判を使用する。2110万画素だから、さぞかし凄い画像が引き出されると思っていた。この画像はフィルムの4×5inch判を軽く越えるきめ細かなものだと思い込んでいたからである。しかし、加工をしていない画像は意外や期待以上のものではなかった。2110万画素といえども横幅/1,800mmまで拡大すると画素不足を感じる。

中北さんの説明では、『800mm×1800mm に拡大すると、その状態でほぼ80dpiとなり、画素不足だが、大きなプリントでは離れて見るので、この画素不足に気がつく人は少ないだろうと思う』とのこと。この見え方には前述の銀塩プリントにも当てはまる。また、『2110万画素は35mmフィルムを4000dpiで読んだ画素とほぼ同じ。しっかりしたスキャナを使えば、フィルムを読む場合の最大解像度は6300dpi程度らしいので、スキャナ次第ではこれくらいの水準ではフィルムの圧勝になります。それを越えると、フィルムの粒子より読み込みが細かくなるので解像度の意味がなくなります。ブローニだったら、長辺54mmとすると、36:54=80:120ですから、この場合120dpiで展示できることになります。「風光-V」がそうでした。やっぱりこの違いはあるようですね。』とのことで、今回、改めてフィルム画像の凄さを再認識させられた。

しかし、今回のパノラマ画像の画素不足を補い、解消するように知恵を絞り、最小限の補間処理とコントラスト処理を施すなど、中北さんの出力テクニックを総動員していただいた。僕の細かなプリント指示に見事に応えていただき、結果的には大満足の仕上がりになっている。とても嬉しい。大型プリントは他に2点あり、伊勢和紙Photoの860mm×2,000mm、手漉き和紙の菊判(640mm×970mm)も展示する。また、こちらでプリントしている半切の額装作品は9点あるが、その内の6点は近年の個展で多用している重ね漉き和紙を使っている。しかも、今回は新たな要望を出し、2回重ねて漉いていただいた新作の和紙である。

フォトワークショップ「風」展のプリントは3人が自家処理し、14人分は堀内カラーで出力した。今回展示の作品もすべてしっかり仕上げており、伊勢和紙プリントの魅力を十分堪能していただけると思っている。是非会場に来て、見ていただきたい。お待ちしています。

伊勢和紙による 三輪薫「水の抄」と フォトワークショップ「風」写真展
2011年8月29日(月)-9月3日(土) 10:00-18:00(初日は13:00から、最終日は16:00まで)
小津ギャラリー 中央区日本橋本町3-6-2 小津本館ビル2F TEL.03-3662-1184
http://www.ozuwashi.net/index.html

◎伊勢和紙プリントデモ:連日開催
◎伊勢和紙教室:8/29(月)-31(水)、随時開催
◎三輪薫伊勢和紙セミナー:最終日 9/3(土)13:00 から会場にて開催
◎三輪滞廊予定:8/29(月)-31(水)、9/2(金)-3(土)

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