Toppageへ
 No.566

三輪 薫(みわ かおる)


No.566 『創る』/写真展の額装への拘り 2011/10/1

写真展の額に拘るには理由がある。絵画展や版画展を見ると、作品によって額が違っていることが多い。写真展で違うデザインの額を多く使うと、何故かちぐはぐに感じてしまうことが多いような気がする。また、装飾性のある額に写真を納めると、作品が貧弱に見える。これも実に不思議だ。これまでに開催してきた個展では、ギャラリー所有の無料か少額の額を使うことはほとんどなかった。個展作品は額も含めて作品として眺められてしまうと思うからである。だから、オーバーマットや裏打ちにも気を使う。

「ファインプリント展」ではブックマット仕様にし、写真は印画紙の余白を断ち切ってオーバーマットと同じ材質のアーカイバルな台紙に貼り付けている。和紙作品は画面外の和紙の質感をも作品として考えているので断ち切ることはしない。また、同じサイズのプリントでも作品内容によってはオーバーマットの内側の寸法を変えて展示することもある。同じサイズの額でも、写真のサイズやオーバーマットの切り抜き寸法によって見る側の印象も違ってくる。個展開催が多い僕だが、毎回このことには拘り続けている。

しかし、写真展の展示は額装が全てではなく、いろいろな展示方法がある。フリーになって初めて開催した東北の村を取材した個展「奥会津十年一昔」では、木製パネルに貼って展示した。1990年に開催の東京を15年以上撮り続けた「都市の気配ー東京夢幻」では、プリントを1mmくらいのボードにドライマウントし、ピンナップして展示した。壁に止めるピンにも拘って捜し廻った。1991年に開催の「風光-II」展では、エンビ板に写真を貼り付け、その上に淡い色合いの紙を貼ったオーバーマットを載せ、そのオーバーマットの外周を斜めにカットして白のオーバーマット紙を数ミリ見せて展示した。エンビ板には斜めから見ても見えない位置に細い木枠を付けてボード自体が壁面から浮くようにした。

愛好家のグループ展でも額装は大事なことで、手を抜くと全体がみすぼらしく感じることがある。しっかりした見栄えのいい額を使い、上質なオーバーマットと裏打ち加工した展示にするととても素敵に感じるものだ。作品がよくても、プリント仕上げや額装に手を抜くと折角の作品が映えて見えない。写真展はトータルとして完成度を上げることも重要なことだと思っている。写真展の監修を多く手がけているが、出品者にはこれらのことも大切であることを伝えている。

戻る