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 No.582

三輪 薫(みわ かおる)


No.582 『生きる』/命の重さと生き方-2 2012/3/20

9日、渋谷にある『たばこと塩の博物館』で林忠彦写真展「紫煙と文士たち」を見てきた。この会場に展示された戦後の文士達の写真を眺め、林先生のコメントを読む内に何故か東日本大震災のことが思い浮かび上がってきた。酒を浴びるほど飲み、タバコを吸い、小説を書く文士達は不健康になりがちで、当然ながら人によっては自ら命を縮めた実に凄まじい生き方をした文士も多かったようだ。時には自分の意志で自分の人生にピリオドを打つ文士もいれば、東日本大震災のように自分の意志に反して人生のピリオドを打たされた無念の人もいる。運命と言っては語弊があるかも知れないが、これも人生と受け止めるしかないのかと思ってしまう。

この林忠彦写真展を見て、ヘビースモーカーと思う文士達の生き様には、不健康だから、副流煙は迷惑だから禁煙や節煙でというような思考はまるでなかったのではないだろうかと思ってしまう。今の時代からすると実に乱暴な考え方や生き方であるが、乱暴ではないからいいとは言えない気がしてくるのも事実である。戦後の昭和時代は世の中も面白く、かなり乱暴でいい加減?な生き方も世の中どこかで認めてしまう、許してしまう寛容さがあったのではないかと、ついつい思ってしまう。そう思わせる寛容さが世の中には必要かも知れないとも感じてしまう写真展だった。

銀塩からデジタルになるに従って、人の生き方も益々小さなものになって行くような気がする。ちなみに、僕は昨年の10月中旬から人に言ったら笑われそうな理由で休煙に入っているが、この写真展の紫煙をくゆらせる文士達の姿は格好良く、様になっている。さて、自分の姿はと言えば自信がなく、休煙体制を持続させたほうがいいかも知れないと思い始めている。

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