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 No.583

三輪 薫(みわ かおる)


No.583 『生きる』/人生の考え方 2012/4/1

僕らの世代は生きてきた時代がよかったのかも知れない。世の中も上向いていて、何とかなる、何となしなければと、自分を信じ、妻や家族、周りの人達に助けられながらも何とか暮らしてきた。しかし、現在は就職難の時代で、一流企業への正規採用では、40-50社を受けても内定を得られない大学生も多いと聞く。まさに、結婚と同様に就職の氷河期かも知れないが、楽して結婚や就職が出来るはずもなく、望みが高すぎる部分もあるのではないかとさえ思ってしまう。

僕には巷で言う青春時代がなかったように思っている。二十歳前後は家業の塗師を継いでいて、以後は写真を学ぶだけで遊ぶ余裕などなかった。卒業後は上京し、弟子入り時代で、その後結婚した。就職活動をしている大学生で、日夜勉学に励み、遊びのためではなく学ぶためにだけアルバイトをしている人がどれくらいいるだろうか。大学は学ぶところであり、真面目に学んでいなかったのなら、何処からも声が掛からなくても不思議ではない。

26歳で結婚したのはいいのだが、上京して2年も経っていない状態で、生活の当てもなく、フリーになるのを諦めて勤め人になった。しかし、7年半後には子供が二人いたのだが思い切って退職した。勤めていた頃には、写真家になろうと学び上京したのだから早く本筋に軌道修正せねばとの思いも年々強くなっていたのは確かである。しかし、フリーになるのは容易いが、まずは家族を養う生活費を稼がなくてはならず、順風満帆に暮らせたわけではない。

しかし、先ずは自分を信じ、今できること、この先やらねばならないことを一つ一つこつこつと重ねて行くことが大切だ。それには多少の無理や困難も付きまとうが、自分で選んだ道なのだから仕方がない。高望みしないでゆっくり、じっくりと築き上げて行くことが大事なことだと思っている。僕の場合は、勤め人の頃にこつこつと撮り貯めてきた作品で次々と個展を開催した。勿論、経費を多く掛けて開催したわけではなく、最低限の予算で最大の表現効果を生むにはどうしたらよいかを考えていた。個展を開催すると不思議と仕事が生まれ、個展を続けると信用も得られるようになってくる。生活や個展開催の費用も少しずつだがコマーシャルや雑誌の仕事などで賄えるようになってきた。その循環を重ねてきたことが今の自分につながっている。まあ、そのような生き方が若い僕にでも出来たというよき時代だったのかも知れない。

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