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 No.591

三輪 薫(みわ かおる)


No.591 『創る』/デジタル時代のプリント-2 2012/6/25

デジタル時代の今日、折角のプリントを銀塩の印画紙や写真用紙だけにこだわるのは勿体ない気がする。画材紙やマット紙、和紙などを積極的に活用してこそデジタル時代を謳歌していると言えるのではないだろうか。

油絵は布地のキャンバスに描くものだと思われがちだが、和紙に描いた作品もある。キャンバスに描くのと和紙に描くのでは見た目の印象も随分違ってくる。和紙に描くとキャンバス地よりも優しく落ち着いたタッチに見える。油絵の具を和紙に塗ると絵の具が上に載るだけではなく、油も含め和紙に染みこんでくるからだろう。このような作品を描く画家でも世間では洋画家と思われているが、本人はそのように言われることを嬉しいと思っていない人もいるとのことだ。

写真でも同じ絵柄(元画像)を銀塩の印画紙や写真用紙、画材紙や和紙にプリントすると全く違った写真に見える。インクジェットプリンタでのプリントでは、用紙の素材によってインクの載り方が違い、彩度やコントラストが違って見える。また、表面の質感の違いによることもある。和紙では表だけではなく裏にもプリント出来るが、同じ銘柄の和紙でも表か裏かで結構違いが出る。僕のメーンの用紙は伊勢和紙だが、インクジェットプリンタ用に開発された伊勢和紙Photoシリーズでは粗面(裏面)にプリントすることが多く、手漉きの伊勢和紙には滑面(表面)にプリントすることが大半である。

インクジェットプリンタによるデジタルプリントの醍醐味は、作画と表現目的によってかなり自由に用紙を選ぶことが出来ることだ。自分が銀塩写真だけではなく、洋画、日本画、水彩画、水墨画、リトグラフ、エッチング、木版画など、どの手法で作品作りをしたいかで決めるとよい。勿論、一番いいのは撮影時にこの思いを浮かべることである。

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