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 No.596

三輪 薫(みわ かおる)


No.596 『創る』/オリンピックの感動 2012/8/25

スポーツにはそれほどの感心も興味もない僕だが、今年のロンドンでのオリンピックの競技には感動させられたことも多かった気がする。スポーツとは言え、競技の中に人間ドラマが展開されていて、涙腺がゆるむことも多かった。スポーツも含めた人間ドラマはアナログ世界である。だから感動を与えてくれるし、競技者が人生を掛けて取り組むのだと思っている。しかし、写真を撮るのはアナログの人間であるが、何故か作品創りも含め今やデジタルが主流になっている。これでいいのだろうか、とついつい思ってしまう。

日本画や油絵、書道などは、ある意味写真と同じ土俵で作品作りをしている表現世界であるが、写真やムービー以外にはデジタルとは無縁である。また、今年の日本の映画館で上映の作品にはデジタル処理を駆使した内容のものは苦戦しているとか。ストレートな描写の人間ドラマのほうが受け入れられているという。何となく分かるような気がする。デジタルはエスカレートするばかりで際限がない。写真の世界も同じで、カメラ機器のデジタル化には終焉はなく、日々進化している事がよいことばかりだとは言い切れない部分もあるような気がする。

このことは、僕らの世代のようにモノクロの銀塩写真漬けにならないと写真の奥義を会得できなかった者以外には理解できないことかも知れない。写真界も、銀塩モノクロ、リバーサルフィルム、デジタルフォトと時代の流れと共に移り変わってきた。それぞれにその分野を理解するためには、それぞれの経験をしっかり積まないと本当の理解は出来ないと思っている。写真界は今や、そのような「写真の歴史」を真摯に受け止めて歩むのか、あるいは、そのような古い写真の歴史など関係ないとデジタル一辺倒で突き進むのかの二分化し始めたように感じている。

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