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 No.601

三輪 薫(みわ かおる)


No.601 『創る』/三原橋地下街の映画館 2012/10/15

「ニッポンの嘘」は銀座の三原橋地下街にある名画座の『銀座シネパトス』で上映されているのを観たのだが、この映画館は来年3月に閉館となる。この晴海通りを横切る三原橋地下街は、銀座中央通りと昭和通りの間を流れていた「三十間堀川」と呼ばれた水路を埋め立て、晴海通りの地下部分のみ地下街として1952年暮れに完成した最も古い地下街だということだ。銀座4丁目から新橋方面の5丁目に行くときや、逆方向に歩く時には、晴海通りの横断歩道を歩くよりもこの地下街を通り抜けることのほうが多い。通路の片側が映画館で向かい側に小料理店が連なっている。映画館は当初の「銀座東映」から「銀座地球座」と「銀座名画座」の2つの映画館に変わり、現在は2スクリーンの名画座「銀座シネパトス」になっている。この映画館には今回初めて入ったのだが、古い地下街の映画館であるだけにイスが斜面に並んでいるのではなく床もほぼ平で、昔懐かしい佇まいの雰囲気に溢れていた。この映画館は名画座であるだけに日活ロマンポルノも多く上映されていて、向かい側の小料理店の雰囲気と共に何となく場末的な情景に見える。上京した40年ほど前の銀座には他にも名画座があったが、現在はこの「銀座シネパトス」だけである。上京時と違って現在はほとんど行かない名画座だが、来年3月末に銀座から姿を消してしまうのは寂しい気がする。

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