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 No.635

三輪 薫(みわ かおる)


No.635 『創る』/画面比率-2 2015/3/8

正月過ぎに仕事場で妻が捜し物をしていて、何と40年近く前の1976年に銀座ニコンサロンで開催した初回の個展「道道」の時に(株)凸版印刷で作ったA5くらいの小さなポートフォリオが出てきた。この個展作品は名古屋の写真学校で学んでいたときより小型カメラで撮り続けてきたもので、横位置の画面を画面比率 [1:2] にトリミングし、パノラマ画面で半切にプリントして展示した。

幸いにも当時のカメラ誌の写真展批評に取り上げてくれたのだが、画面比率が[1:2] のカメラで撮ったわけでなく、単なるトリミングだと酷評された。しかし、作品内容はとてもほめてくれた奇妙な批評記事だった。当時の若さ故か結構かちんときた記憶が残っている。しかし、この写真展評は毎月2つの個展のみ掲載で、当時でも都内のギャラリーで開催の写真展は50近くあったので、「選ばれ掲載されただけよかったのだよ」と仲人親の名古屋の先生からなぐさめとも励ましともとれる電話があったことを覚えている。この先生からは現在でも時々電話をいただくこともあり、昨年久しぶりにご自宅に伺った。お会いでき嬉しく、元気をいただいた。

個展「道道」の作品は、勿論、単なるトリミングではなく、撮影時から [1:2] のフレーミングをファインダー内で決めていた。ワイドレンズの場合はゆがみを生かすために短辺の上か下の片側だけカットして [1:2] にすることもあった。

従来のアナログTVの画面比率は 4:3
現在のデジタルTVの画面比率は 16:9
映画で最も細長い画面比率は 2.35:1

細長いワイド画面は結構見慣れていて、縦長もお洒落に感じますね。

この個展「道道」の作品はモノクロの心象風景。今見ても結構面白い。展示した50点くらいのプリントはドライマウントプレス機で裏打ちし、オーバーマットは型抜きし、アルミ額は全て新調した。このポートフォリオを1,000部凸版印刷に発注し、オープニングパーティーまで開催したとても贅沢な個展だった。しかし、個展終了後の支払いが大変で、当時の給料の1年分くらいつぎ込んだと記憶している。このときのご祝儀がまたすごかった。9人兄妹の母方の神戸からは親戚中の各家から集めたものを叔母が代表で届けてくれたりと、あちこちから集まり、何と当時の僕の給料の4、5ヶ月分集まって随分助かり感謝した。しかし、まだまだ足らず、支払いを終えるには半年くらいかかったと思う。

このアート紙にオフセット印刷したポートフォリオをスキャンして伊勢和紙photo雪色にプリントしてみた。展示のプリントは光沢紙にフェロ掛けしたが、伊勢和紙の粗面にプリントしても別な味わいがあり、これもいいものだと思った。ポートフォリオの全てのカットをプリントし、手作りの写真集にまとめてみた。

しまい込んだフィルムが見つかったら、いろいろな伊勢和紙にプリントし、自らアンコール展をしても面白いかなと思ったりしている。特に「わの会」のみなさんは個展「道道」をほとんどの方が知らないだろうから興味津々と見てくれるかも知れない。
我がである。

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