Toppageへ
 No.640

三輪 薫(みわ かおる)


No.640 『創る』/三輪薫写真展「仏蘭西・巴里」〜西洋と東洋の融合〜 2015/7/27

日本橋の小津ギャラリーでは2009年から2012年まで毎年夏に僕の個展と主宰するフォトワークショップ「風」の写真展を開催してきた。2013年と2014年はギャラリーのあるビルの耐震工事が始まり、写真展開催は中断していた。今年は3年ぶりになる写真展を再開し、現在開催中である。

僕のデジタルプリント用紙のメインは独自の存在感を見せてくれる和紙で、大半の作品創りには伊勢和紙を使っている。アーカイバルな伊勢和紙に顔料インクでプリントしたものは銀塩プリントを凌ぐ耐久性が期待できる。また、銀塩印画紙とは一味違う和紙の風合いが好きで、多種多様な伊勢和紙で作るデジタル・ファインプリントへの魅力は尽きない。

名古屋で写真を学んでいた45年くらい前頃、エド・ヴァン・デル・エルスケンやウジェーヌ・アジェなどが撮った巴里の世界にあこがれを抱いていた。フリーになってから一時期パリに通っていて、時には8×10インチ判カメラを担いで歩き回っていたこともある。今回の個展では、これらのモノクロとリバーサルフィルムで撮った写真を多銘柄の伊勢和紙に全てモノクロでプリントして展示しているが、長い歴史のあるパリやモンサンミッシェルの建造物や街並みの情景が東洋の和紙にどのような再現を見せてくれるのか楽しみであった。結果として銀塩の印画紙などよりも味わいがあり、流れた時間までも画面の中に取り込んでいるような錯覚を受ける仕上がりになったと自負している。ウインドウのマヌカンを撮ったカットも展示していて手漉き和紙の大直紙にプリントしているが、モダンな色香や艶っぽさを感じさせてくれるから和紙は面白い。今回も近年愛用している重ね漉き落水を3点使っていて、夜景の街灯などの光りの奥行き感が出ているように思う。和紙が秘める表現の可能性にますますのめり込み、和紙のとりこになっている。

フォトワークショップ「風」の作品も多種の伊勢和紙にプリントしているが、プロラボの堀内カラーでプリントの今回の作品は伊勢和紙photo芭蕉が結構多い。機械漉きの銘柄の中では最も好きな和紙である。重ね漉き落水の和紙も2名の方が自家処理プリントで使っていて、他の用紙では到底再現できないクオリティーの高い仕上がりを見せている。

初日の今日は36度と蒸し暑い日だったが、開館の午後1時から6時の閉館間際まで実に多くの方々にご来場いただいた。嬉しい限りである。会場では伊勢和紙の社長・中北喜得さんによる伊勢和紙プリントワークショップも開催している。デジタルの画像データかフィルムを持ってきていただければA4サイズに無料でプリントしている。まず、ストレートのプリントを出し、それに僕が作画と表現におけるプリント指示を入れ、再プリントしてお渡ししている。写真展などの本番プリントのクオリティーまでには出来ないが、プリントのこつは体験していただけると思う。

夏の暑い最中ですが、是非ご来場下さい。お待ちしています。 *連日10:00-18:00開館で、8月1日(土)午後4時まで開催中です。

戻る