Toppageへ
 No.696

三輪 薫(みわ かおる)


No.696 モルエラニの霧の中 2021/3/5

先月22日、28日から始まる伊勢和紙ギャラリーでの巡回展に行くため、西武新宿線の駅前にある新型コロナPCR検査センターで検査を受ける前に、神保町にある岩波ホールで映画「モルエラニの霧の中」を見てきました。北海道室蘭市を舞台に、冬の章、春の章、夏の章、晩夏の章、秋の章、晩秋の章、冬の章と7つの短編による上映時間214分の映画で、途中15分間の休憩時間を挟んで約4時間の上映でした。実話を元にした脚本により室蘭市で暮らす人達の日常が淡々と描かれていて、見ている自分もスクリーンの中の世界と同時進行しているような気がしていました。

香川京子、今は亡き大杉漣と小松政夫、一人芝居「土佐源氏」の坂本長利、大塚寧々などと市民も多数出演。モノクロを多用し、カラーもさらりとしたトーンを出すことで実話と思わせる日常をうまく伝えていました。大杉漣は写真館経営の役で、スタジオのアンソニーや4×5inch判のビューカメラが似合っていました。各章の登場人物に自分を重ね、人生を思い、考えてしまう映画だと思いました。

監督・脚本・音楽を務めた映画作家・坪川拓史が東日本大震災後に故郷の室蘭に戻り、街の記憶を残そうと、街の人々から聞いたエピソードを元に脚本を執筆。2014年に市民有志が資金を集め始め、5月にクランクインし、資金不足で度々中断せざるをえなかったものの2018年に撮影終了。延べ1,000人の市民が協力して作り上げた映画だそうです。

この映画は昨年3月にこのホールで公開される予定だったのですが、新型コロナウイルスの感染拡大で延期になり、9月からは改装工事で休館となり、2月6日より再オープンの初回の映画となっています。座席も220席を192席に減らし、今回は1席飛びにしか座れないようにして三密を防いでいて、ゆったりと見ることが出来ます。3月12日(金)まで。

戻る