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 No.727

三輪 薫(みわ かおる)


No.727 便利さと不便さ−3 2023/9/15

今日から銀座の富士フォトギャラリーでハッセルブラッドフォトクラブジャパンの第30回HPCフォトコンテストと第12回クラブ誌・誌上フォトコンテストの作品展が21日まで開催されます。ハッセルブラッドといえば、20歳を過ぎて名古屋の専門学校で写真を学んでいた頃には、80mmの標準レンズ付きで初任給の半年分くらいし、超あこがれのカメラでした。2年間の在学中に触れたこともなく過ぎました。このカメラはメカニカルのレンズシャッター方式で、フィルムの巻き上げもクランク式でした。絞りやシャッター速度は単独の露出計で測光して決めていました。現在のデジタルカメラのように大半が自動で出来るわけではなく、全てが手動で、速写性もなく、比べると不便きわまりないと思います。しかし、この不便さがいいのです。撮ったという気持ちになれるのです。

すてきな被写体に出会うとウエストレベルのファインダーを覗いてフレーミングを決め、内蔵のルーペを起こしてピントの位置を決めます。そして、単独の露出計で測光し、絞りやシャッター速度をセットし、フィルムバックの引き蓋を抜いておもむろにシャッターを切る。この動作が何とも言えず心地よく、満足感に溢れた至福の時間でした。こういう不便さは大型カメラになるともっとあり、フィルムがB5サイズくらいある8×10インチ判にもなるとアオリも含めセットするだけで数10分も掛かることもあるくらいです。大きな黒い布をかぶり、後部のピントガラスに映る逆像をじっくり見つめてフレーミングを決め、ルーペを覗いてピントを合わせる。もう最高の気分です。車の運転が好きな方にはオートマチックには興味がなく、自分の意志で操ることが出来るマニュアルミッションの車に愛着を持つのと似ているでしょう。写ってしまうのと、写すのとでは、雲泥の違いがあるかも知れません。現在のカメラは相手が動いていてもピントを合わせてくれたり、秒間数十コマも切れてシャッターチャンスを逃すことなく撮ることが出来る実に便利で嬉しいカメラになっています。40年以上も前のカメラはピントも露出も手動で、モータードライブ措置があっても秒間数コマ。当時のスポーツや動物写真のプロは連続シャッターではなく、1枚撮りで見事にシャッターチャンスを決めていました。まさに職人芸の凄技で驚きです。


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